大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

京都地方裁判所 昭和49年(行ウ)2号 判決

京都市右京区嵯峨広沢西裏町七番地七

原告

福田稔こと

丁海雲

訴訟代理人弁護士

高田良爾

渡辺哲司

京都市下京区間之町五条下ル

被告

下京税務署長

今福三郎

指定代理人検事

髙田敏明

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は、原告の負担とする。

事実

第一当事者の求める裁判

一  原告

被告が昭和四六年三月一二日付で原告に対してした昭和四二年分所得税更正処分のうち総所得金額九四万六二九〇円を超える部分及び所得税額四万〇九〇〇円を超える部分を取り消す。

被告が昭和四六年七月一四日付で原告に対してした昭和四三年分、昭和四四年分の所得税更正処分(裁決によって取り消された後のもの・以下昭和四二年分ないし昭和四四年分の更正処分を本件処分といい、各更正処分を、それぞれ昭和四二年分処分、昭和四三年分処分、昭和四四年分処分という)のうち、昭和四三年分処分については総所得金額が一一五万〇九五〇円、所得税額が六万三二〇〇円を超える部分、昭和四四年分処分については総所得金額が二一五万五五一五円、所得税額が二四万六〇〇〇円を超える部分をいずれも取り消す。

訴訟費用は、被告の負担とする。

との判決。

二  被告

主文同旨の判決。

第二当事者の主張

一  本件請求の原因事実

(一)  原告は、砂利採取業を営むものであるが、昭和四二年分ないし昭和四四年分(以下本件係争年分という)の所得税について、被告に対し確定申告をした。

被告は、これに対し更正処分をしたので、原告は、被告に対し異議の申立をしたところ、被告は、昭和四三年分及び昭和四四年分の更正処分の一部を取り消す旨の異議決定をした。

原告は、国税不服審判所長に対して審査請求をしたところ、同審判所長は、昭和四三年分及び昭和四四年分の更正処分(異議決定で一部取り消された後のもの)の一部を取り消す旨の裁決をした。

以上の課税の経過とその内容は、別表一に記載されたとおりである。

(二)  しかし、被告が、原告の本件係争年分の所得を過大に認定した点で、本件処分は、違法である。

(三)  結論

原告は、被告に対し、本件処分のうち、原告が確定申告をした所得金額及びその税額を超える部分の取消しを求める。

二  被告の答弁と主張

(認否)

本件請求の原因事実中、(一)の事実は認め、(二)の主張を争う。

(主張)

(一) 原告の本件係争年分の総所得金額は、別表二の一ないし三の〈14〉事業所得金額と〈15〉譲渡所得金額と〈16〉不動産所得金額との合計であり、その額は、いずれも次のとおりであるから、これを下廻る本件処分には、なんらの違法がない。

昭和四二年分 三九二九万三三七〇円

昭和四三年分 六一四二万六七五七円

昭和四四年分 五七九八万三二七一円

以下にその計算根拠を分説する。

(1) 事業所得金額

総収入金額から必要経費を控除した額である。

1 総収入金額

別表三の一ないし三がその内訳である。なお、別表三の二、三の「原告申立額」とは、審査請求時に原告が申し立てた額である。

2 必要経費

以下の〈1〉ないし〈7〉の合計額である。

〈1〉 売上原価

別表四がその内訳である。

〈2〉 雇人費

昭和四三年分、昭和四四年分の雇人費は、別表五の一、二に記載したとおりである。

昭和四二年分については、昭和四四年分の雇人費率によって計算した。

2297万9686円(昭44の雇人費)÷3億2397万4668円(昭44の総収入金額)×100=7.10%

1億4977万6007円(昭42総収入金額)×7.10%=1063万4097円(昭42の雇人費)

〈3〉 減価償却費

別表六がその内訳である。

〈4〉 支払利息・割引料

昭和四二年分 一〇〇五万六八二四円

朝銀京都信用組合九条支店(以下朝銀京都信用という)に支払われたもの

昭和四三年分 一五八七万三九〇二円

一四〇四万八九〇二円-朝銀京都信用分

一八二万五〇〇〇円-金山顕徳分

昭和四四年分 二四二八万九七三二円

一九二八万八七三二円-朝銀京都信用分

五〇〇万一〇〇〇円-金山顕徳分

〈5〉 傭車料

傭車料とは、原告が採取した砂利を売上先へ運搬するに当たり、他の業者に運送を委託した場合、運送した砂利の量に応じて支払われる金額のことで、別表七は、昭和四四年分の傭車料の内訳である。なお、同表の「水引額」とは、砂利に含まれた水分が運搬中に漏泄、蒸発等により減少するため、傭車料算定の際、減少した水分に相当するものとして差し引く金額をいう。

原告は、昭和四二年分、昭和四三年分の傭車料の資料を提出しないので、昭和四四年分の傭車料率によって計算す

8861万2209円(昭44の傭車料)÷3億2397万4668円(昭44の総収入金額)×100=27.36%(小数点第3位切上げ)

1億4977万6007円(昭42の総収入金額)×27.36%=4097万8716円(昭42の傭車料)

2億4199万1436円(昭43の総収入金額)×27.36%=6620万8857円(昭43の傭車料)

〈8〉 その他の費用

昭和四四年分の〈6〉その他の費用は、別表八に記載したとおりである。

原告は、昭和四二年分及び昭和四三年分のその他の費用の資料を提出しないので、昭和四四年分のその他の費用率によって計算する。

7785万3960円(昭44のその他の費用)÷3億2397万4668円(昭44の総収入金額)×100=24.04%

1億4977万6007円(昭42の総収入金額)×24.04%=3600万6153円(昭42のその他の費用)

2億4199万1436円(昭43の総収入金額)×24.04%=5817万4742円(昭43のその他の費用)

〈7〉 事業専従者控除額

原告の本件係争年分の事業専従者控除額は、いずれも一五万円である。

(2) 譲渡所得金額、不動産所得金額

別表二の一ないし三の〈15〉譲渡所得金額(ただし、損失金額)及び〈16〉不動産所得金額の各欄に記載されたとおりの金額である。

(三) 被告は、原告の本件係争年分の事業所得金額を計算するため、前述したとおり、資料のないところは、推計によらざるをえなかった。

ところで、被告の部下職員が原告の本件係争年分の所得調査をした際、原告は、その事業に関する帳簿書類の提示に応じなかった。

そこで、被告は、必要な範囲で推計の方法をとったが、その推計が合理的であることは、原告自身の数値によっていることから明らかである。

三  原告の反論

(一)  被告の主張は、全部争う。ただし、別表三の一の全売上先、別表三の二、三のうち被告主張額と原告申立額とが一致する分及び前者が後者より低額な分の売上は、いずれも認める。別表二の一ないし三の〈13〉事業専従者控除額、〈15〉譲渡所得金額、〈16〉不動産所得金額を認める。

(二)  原告は、被告の部下職員から帳簿書類の提示を求められたことがないから、推計の必要性が具備されていないし、被告の推計には、合理性がない。すなわち、

(1) 被告は、原告が国税不服審判所に対して提出した昭和四四年分の資料を基礎に雇人費、傭車料及びその他の費用の各金額を昭和四四年分の実額として主張している。しかし、原告自身が提出した資料には、計上漏れがあるし、その他の費用の中には、旅費交通費、印紙代、切手代、人件費、労災保険料、営業に伴う損害補償などが欠落している。そのうえ、原告の提出した資料の裏付けとなる原始資料がない。したがって、原告の提出した資料は、不正確である。

(2) 原告の昭和四四年分のその他の費用には、昭和四四年一二月二一日から同月三一日までの経費分七一三万七三三二円(甲第六七号証の一三)を加算しなければならないから、昭和四四年分のその他の費用は、八五〇一万五〇四四円となる。

(3) 原告は、昭和四七年二月、法人成りをしたが、訴外株式会社京都福田の決算書によって砂利採取に関する昭和四七年から昭和五三年までの平均雇人費率などを算出すると次のとおりになる。

被告主張率(%) 原告主張率(%)

雇人費率 七・一〇 一一・九七

傭車料率 二七・三六 三四・五二

その他の費用率 二四・〇四 二六・八一

この対比からすると、被告主張率は、不正確である。それは、前述したとおり、昭和四四年分の資料自体が不正確であることに原因する。そのうえ、原告は、昭和四二年からある程度営業を開始したものの、昭和四一年、昭和四二年に砂利採取のために山林を新規に購入し、採取準備のため多額の経費を投入し、昭和四四年になってようやく比較的安定した営業に入ることができた。したがって、昭和四四年分の資料で、昭和四二年分、昭和四三年分の推計をすることには、合理性がない。

四  原告の反論に対する被告の反駁

(一)  被告は、原告の昭和四三年分及び昭和四四年分の雇人費を、原告の支払簿によって算出したし、昭和四二年分のそれは、昭和四三年分の雇人費率六・一九パーセントによらず、昭和四四年分の雇人費率七・一〇パーセントによった。被告は、この点では原告に有利に取り扱った。

(二)  被告は、原告の昭和四四年分のその他の費用を、原告の一般支払簿によって算出して、七七八五万三九六〇円と主張した。しかし、これには、家事関連費等四七八万〇三〇六円(その内訳は、別表九である)が含まれているから、同額を控除すべきであった。したがって、原告には、有利になっているのである。

(三)  原告は、昭和四四年分の資料を基礎に、雇人費率、傭車料率、その他の費用率を算出し、昭和四二年分、昭和四三年分に適用することは、不合理であると主張しているが、原告の砂利採取業は、昭和四二年ころから商売らしくなり、徐々によくなったのであるから、原告の昭和四二年ないし昭和四四年の事業形態には、特段の変化がなかったといえる。したがって、被告の推計には、合理性がある。

(四)  原告は、法人に組織変更後の営業と比較しているが、個人より法人の方が組織体として管理費を初め種々の経費が増大することは、当然のことであり、個人と法人とでは、会計処理が自ら異るのである。したがって、この比較は、実体に合致せず的外れである。

(五)  原告は、その提出した資料には記載漏れがあり不正確であると主張しているが、原告の一般支払簿には、多少の記載漏れがあっても、その記載漏れ以上に必要経費に算入できない金額の記載があるから、この主張は、失当である。

(六)  原告は、昭和四四年分のその他の費用には、昭和四四年一二月二一日から同月三一日までの分(甲第六七号証の一三)を加算すべきであると主張しているが、これは、昭和四三年一二月の一般経費であることが、甲第六七号証の一ないし一二と同号証の一三とを対比したとき明白である。

第三証拠関係

本件記録中の証拠の標目欄記載のとおりであるから、ここに引用する。

理由

一  本件請求の原因事実中(一)の事実(課税の経過とその内容)は、当事者間に争いがない。

二  推計の必要性について

(一)  証人西垣良一、同田中信也、同洪仁卓の各証言によると次のことが認められ、この認定に反する原告本人尋問の結果は採用しないし、ほかにこの認定に反する証拠はない。

(1)  被告は、原告の本件係争年分の確定申告を受理し、その所得金額が極端に低いことに疑問をもち、部下職員に調査を命じた。

(2)  部下職員である下京税務署所得税第一課所属の西垣良一調査官は、昭和四五年一一月中旬ころ、原告方に行ったが原告は留守であったため面談できなかった。

西垣良一調査官は、同月二〇日、原告方に行って、原告と会い、原告の事業概況等について質問をした。このときには、谷口事務官も同道した。

西垣良一調査官は、このとき本件係争年分の営業帳簿の提示を求めたが、原告は、記帳は一切していないと返答し、商工信用組合の当座取引を調べれば、売上金が判ると述べた。

そこで、西垣良一調査官は、同年一一月二六日、同組合で、原告と原告の代理人訴外洪仁卓に会い、その際、原告から、その当座預金元帳のコピーを提出することの了解を得た。

ところが、その後、西垣良一調査官の督促にもかかわらず、原告から右コピーの提出はなかった。

(3)  西垣良一調査官は、同年一二月二日、城陽市青谷にある原告の山砂利採取現場に臨場して、その現場の規模を調査するとともに、現場事務所で原告に会い、帳簿書類を提示するよう求めたが、原告は、現場事務所には帳簿書類がないと返答した。

(4)  そこで、西垣良一調査官は、これ以上は原告の協力が得られないものと判断して反面調査に入った。

(5)  被告の部下職員は、その後も、原告に帳簿書類等の提示を求めたが、洪仁卓から昭和四四年分の売上金額の一覧表が提出されただけであった。

(6)  原告は、審査請求の段階で、本件係争年分の売上帳を出したが、それも不完全なものであり、原始資料は提出されなかった。

(二)  以上認定の事実によると、被告としては、原告の本件係争年分の事業所得を把握するため、資料のないところは、推計の方法によらざるをえないのである。なお、推計の合理性については、それぞれの箇所で判断することにする。

三  事業所得金額について

(一)  〈1〉収入金額

(1)  別表三の二、三のうち、原告の認否欄に○のついた被告主張額を、原告は認めて争わない。そこで、問題になるのは、別表三の二、三のうち原告の認否欄に×のついた被告主張額及び別表三の一の被告主張額(ただし、売上先については当事者間で争いがない)である。

成立に争いがない乙第三号証、同第六号証、同第八ないし第一〇号証、同第一二ないし第一八号証(いずれも原告の売上帳)、証人田中信也の証言によって成立が認められる乙第一号証、同第七号証、同第一一号証、証人岡上真一の証言によって成立が認められる同第二号証の一、二、同第四、五号証の各一、二(同第二、四、五号証の各一の官署作成部分の成立には争いがない)、証人田中信也、同岡上真一の各証言及び弁論の全趣旨によると、被告主張額をいずれも認めることができ、この認定に反する証拠はない。

(2)  そこで、〈1〉収入金額は、被告主張額による。

昭和四二年分 一億四九七七万六〇〇七円

昭和四三年分 二億四一九九万一四三六円

昭和四四年分 三億二三九七万四六六八円

(二)  必要経費

(1)  〈2〉売上原価

成立に争いがない乙第二六、二七号証、証人田中信也の証言及び弁論の全趣旨によって、被告主張額を正当として認めることができ、この認定に反する証拠はない。

昭和四二年分 七六九万〇六七五円

昭和四三年分 一一八四万七五七二円

昭和四四年分 三〇二一万六八五五円

(2)  〈3〉雇人費

(昭和四三年分)

成立に争いがない乙第一九号証の一ないし一二、証人田中信也の証言及び弁論の全趣旨によると、別表五の一のとおり一四九九万七〇九〇円であることが認められ、この認定に反する証拠はない。

(昭和四四年分)

成立に争いがない乙第二〇号証の一ないし一〇、証人田中信也の証言及び弁論の全趣旨によると、別表五の二のとおり二二九七万九六八六円であることが認められ、この認定に反する証拠はない。

なお、原告から提出された資料には、八月ないし一〇月に支払われた給与の記載がなかったため、被告は、一月から七月までと一一月、一二月の給与支給額の一か月平均を算出してこれを八月ないし一〇月の給与支給額として計上して主張しているが、このような計算方法は、資料が提出されない以上やむをえない方法として是認されなければならない。

(昭和四二年分)

原告からの資料の提出がなかったため、昭和四四年分の雇人費率七・一〇パーセントを算出のうえ、昭和四二年分の雇人費を推計して主張している。そして、この推計方法は、原告自身の雇人費率を適用するのであるから、特別の事情のない限り最も合理性があるとしなければならない。

原告は、昭和四四年分の資料によって算出された雇人費率によって昭和四二年分の雇人費を推計することに合理性がないと主張しているが、原告本人尋問の結果によると、原告は、昭和三九年ころから資本を投じて砂利採取業をはじめ、昭和四二年ころから商売らしくなり、年をおって順調にのびて行ったことが認められるから、昭和四二年から昭和四四年にかけて、売上金額の上昇と平衡して必要経費も上昇したものといえる。したがって、昭和四四年分の雇人費率を昭和四二年分の雇人費に適用することは、原告の営業の実体に合致するとしなければならない。

原告は、法人成りをしてからの雇人費とを比較しているが、個人と法人との営業形態を全く無視した主張には、なんらの合理性を見出すことができないから、この主張は、採用の余地がない。

原告の昭和四二年分の雇人費は、前記雇人費率を適用して計算すると、一〇六三万四〇九七円になる。

(3)  〈5〉減価償却費

成立に争いがない乙第二二号証、証人田中信也の証言及び弁論の全趣旨によると、原告の本件係争年分の減価償却費が被告主張(別表六)のとおりの額であることが認められ、この認定に反する証拠はない。

昭和四二年分 四五一万一〇五二円

昭和四三年分 一二八三万五八〇八円

昭和四四年分 二一二九万八七一四円

(4)  〈6〉支払利息・割引料

成立に争いがない乙第二一号証の一ないし五、証人田中信也の証言及び弁論の全趣旨によると、被告主張どおりの額が認められ、この認定に反する証拠はない。

昭和四二年分 一〇〇五万六八二四円

昭和四三年分 一五八七万三九〇二円

昭和四四年分 二四二八万九七三二円

(5)  〈7〉傭車料

(昭和四四年分)

成立に争いがない乙第二三号証の一ないし八、証人田中信也の証言及び弁論の全趣旨によると、原告の昭和四四年分の傭車料は、被告主張(別表七)のとおり八八六一万二二〇九円であることが認められ、この認定に反する証拠はない。

なお、原告から提出された資料には、七月ないし一〇月に支払われた傭車料の記載がなかったため、被告は、一月ないし六月、一一月、一二月の傭車料支払額の一か月平均を算出してこれを七月ないし一〇月の傭車料支払額として計上して主張しているが、このような計算方法は、資料が提出されない以上やむをえない方法として是認されなければならないことは、前記昭和四四年分の雇人費と同断である。

(昭和四二年分、昭和四三年分)

原告からの資料の提出がなかったため、昭和四四年分の傭車料率二七・三六パーセントを算出のうえ、昭和四二年分、昭和四三年分の傭車料を推計して主張している。そして、この推計方法は、原告自身の傭車料率を適用するのであるから、特別の事情のない限り最も合理性があるとしなければならない。

原告は、雇人費率が不合理であると主張したのと同じ理由で傭車料率が不合理であると主張しているが、既に雇人費の箇所で判断したのと同じ理由で、原告のこの主張を採用しない。

原告の昭和四二年分、昭和四三年分の傭車料は、前記傭車料率を適用して計算すると、次のとおりの額になることは、計数上明らかである。

昭和四二年分 四〇九七万八七一六円

昭和四三年分 六六二〇万八八五七円

(6)  〈9〉その他の費用

(昭和四四年分)

成立に争いがない乙第二四号証の一ないし一二、同第二五号証、証人田中信也の証言及び弁論の全趣旨によると、被告主張(別表八)どおり七七八五万三九六〇円を超えない額であることが認められ、この認定に反する証拠はない。

原告は、被告主張の昭和四四年分のその他の費用の中には、昭和四四年一二月二一日から同月三一日までの経費分七一三万七三三二円(甲第六七号証の一三)を加算しなければならないと主張している。

しかし、甲第六七号証の一三の帳簿の写は、昭和四三年一二月分の帳簿の写であることが、当裁判所が真正に作成されたものと認める乙第二八号証や弁論の全趣旨によって明白である。したがって、原告のこの主張は、採用できない。

(昭和四二年分、昭和四三年分)

被告は、雇人費、傭車料と同様、昭和四四年分のその他の費用率を適用して昭和四二年分、昭和四三年分のその他の費用額を算出しているが、この推計方法に合理性があることは、雇人費、傭車料の箇所で説示したとおりである。

そこで、昭和四四年分のその他の費用によって算出されたその他の費用率二四・〇四パーセントを適用して昭和四二年分、昭和四三年分のその他の費用を計算すると、被告主張額になる。

昭和四二年分 三六〇〇万六一五三円

昭和四三年分 五八一七万四七四二円

(7)  〈13〉事業専従者控除額

この額は、当事者間に争いがない。

(三)  事業所得金額

〈1〉収入金額から必要経費及び〈13〉事業専従者控除額を差し引いた額が、事業所得金額になる。

昭和四二年分 三九七四万八四九〇円

昭和四三年分 六一九〇万三四六五円

昭和四四年分 五八五七万三五一二円

原告は、昭和四四年分の事業所得の計算として、甲第一ないし第二二号証を提出している。

ところで、甲第一号証によると、売上収入は、被告主張の〈1〉収入金額と大差がない。しかし、同号証に掲記された必要経費は、原告の計上漏れのある杜撰な売上帳に基づくものである(証人洪仁卓の証言、原告本人尋問の結果によって認める)から、これらの書証は、直ちに採用できない。

四  〈15〉譲渡所得金額、〈16〉不動産取得金額について

この各金額は、当事者間に争いがない。

五  総所得金額について

原告の本件係争年分の総所得金額は、事業所得金額、譲渡所得金額、不動産所得金額の合計であり、その額が、被告主張の金額になることは、計数上明らかである。

昭和四二年分 三九二九万三三七〇円

昭和四三年分 六一四二万六七五七円

昭和四四年分 五七九八万三二七一円

六  むすび

そうすると、本件処分は、この額を超えないことが明らかであるから、本件処分には、取り消すべき何等の瑕疵がないことに帰着する。

そこで、原告の本件請求を失当として棄却し、行訴法七条、民訴法八九条に従い、主文のとおり判決する。

(裁判長判事 古崎慶長 判事 小田耕治 判事補 西田眞基)

別表一 課税処分経過表

〈省略〉

別表二の一 昭和42年分 所得金額計算書

〈省略〉

※ 各経費率は、小数点3位未満切上げ。

別表二の二 昭和43年分 所得金額計算書

〈省略〉

※ 各経費率は、小数点3位未満切上げ。

別表二の三 昭和44年分 所得金額計算書

〈省略〉

※ 各経費率は、小数点3位未満切上げ。

別表三の一

昭和42年分収入金額売上先別内訳

〈省略〉

〈省略〉

別表三の二 昭和43年分 収入金額売上先別内訳

〈省略〉

〈省略〉

別表三の三 昭和44年分 収入金額売上先別内訳

〈省略〉

別表四 売上原価の計算書

〈省略〉

別表五の一 昭和43年分 雇人費計算表

〈省略〉

昭和43年分 雇人費明細表

No.1

〈省略〉

No.2

〈省略〉

別表五の二 昭和44年分 雇人費計算表

〈省略〉

昭和44年分 雇人費明細書

No.1

〈省略〉

No.2

〈省略〉

No.3

〈省略〉

別表五 減価償却費の計算

〈省略〉

〈省略〉

〈省略〉

〈省略〉

注……減価償却額欄(かっこ)書は償却月数

別表七 昭和44年分 傭車料計算表

〈省略〉

別表七の別紙〈2〉 昭和44年分 傭車料支払明細表

No.1

〈省略〉

No.2

〈省略〉

昭和44年分 その他の費用月別集計表(訂正後)

〈省略〉

その他の費用に該当しないものの明細

((注) 下記番号欄及び理由欄( )内の数字は、別紙1中の該金額の記載された箇所を示す朱書の番号である〕

〈省略〉

〈省略〉

別表九

1. 一般支払のうち家事関連費として否認すべきもの

〈省略〉

2. 資本的支出として否認されるもの

〈省略〉

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例